個人再生を始める前の僕は、
「借金の資料を出せばいいんだろう」
くらいに思っていた。
甘かった。
実際に確認されたのは、
銀行口座。
給与。
家計。
財産。
退職金。
副収入。
借金が増えた経緯。
そして最後には、
銀行口座に入っていた1,197円の正体まで聞かれた。
個人再生では、単に「いくら借金があるのか」だけではなく、現在どれくらいの収入や財産があり、この先再生計画どおり返済していけるのかを確認する必要がある。
そのため、必要になる資料もかなり幅広い。
この記事では、裁判所が案内している基本的な必要書類と、僕が実際の申立て準備で提出・説明したものを分けて整理する。
まず結論:借金の書類だけではない
個人再生の申立てでは、大きく分けると、
- 本人や債権者についての書類
- 収入を確認する書類
- 財産を確認する書類
- 家計を確認する書類
- 借金や生活状況を説明するための資料
などが必要になる。
東京地裁の案内でも、申立書や債権者一覧表だけでなく、住民票、収入資料、財産目録、清算価値算出シート、家計全体の状況などの提出が求められている。
つまり、
「借金250万円あります。以上です。」
では終わらない。
借金だけではなく、
その借金を抱えている人の生活全体を見る。
そんな手続きだった。
東京地裁で申立て時に必要になる主な書類
必要書類は裁判所によって異なる。
全国の裁判所も、個人再生の申立てに必要な書類は申立先によって違うため、管轄裁判所へ確認するよう案内している。
出典: 裁判所「個人再生手続」
僕が申し立てた東京地裁では、主に次のような書類が案内されている。
| 種類 | 主な書類 |
|---|---|
| 申立関係 | 申立書、収入一覧・主要財産一覧、債権者一覧表 |
| 本人確認等 | 住民票の写し、委任状 |
| 収入 | 源泉徴収票・確定申告書・課税証明書等、給与明細 |
| 財産 | 財産目録、清算価値算出シート、不動産があれば登記事項証明書等 |
| 家計 | 家計全体の状況 |
| その他 | 内容を裏付ける疎明資料 |
なお、東京地裁の案内では、住民票はマイナンバー記載のないもの、マイナンバーが記載された資料をコピーで提出する場合は該当部分をマスキングするなど、書類ごとの条件も指定されている。
ただ集めればいいわけではない。
発行時期や記載内容にも注意が必要になる。
収入については何を出す?
個人再生は、その後も返済を続けていく手続きだ。
だから、
「これから継続して返していける収入があるのか」
は重要になる。
東京地裁の案内では、小規模個人再生の場合、収入関係として確定申告書、源泉徴収票、課税証明書または所得証明書などに加え、給与明細などが挙げられている。
給与所得者等再生では、収入関係の対象期間などが一部異なり、可処分所得額算出シートも必要になる。
匿名男の場合
僕も、
- 源泉徴収票などの収入資料
- 給与明細
- 賞与に関する資料
などを提出した。
さらに、
退職金に関係する資料
についても確認された。
ただ、悲しいことに、
僕には退職金がない。
そのことが就業条件明示書に記載されていたので、僕の場合はそれを根拠として提出できた。
退職金について会社へ新しく証明書を出してもらう、といった手続きが増えなかったのは助かった。
個人再生では、今すぐ退職する予定があるかどうかとは別に、退職金に関する権利が財産評価に関係する場合がある。
僕の場合は「退職金がない」ということも含めて、資料で確認していった。
銀行口座はかなり細かく確認された
僕が特に大変だと感じたのが、
銀行口座。
申立て準備では、使っている口座の取引履歴だけではなく、
昔作って、ほとんど使っていなかった口座
についても確認された。
「これはもう使ってません」
だけでは終わらない。
残高はあるのか。
取引はあるのか。
何のための口座なのか。
僕の場合は、そうしたところまで整理していった。
なぜ口座を見るの?
個人再生では財産の状況を把握する必要がある。
返済額を考えるうえでは清算価値も関係するため、預貯金などの財産を確認する意味がある。
東京地裁でも、申立てにあたって「収入一覧及び主要財産一覧」「財産目録」「清算価値算出シート」などの提出を求めている。
だから、
「メイン口座だけ出せばいい」
とは限らない。
実際にどの口座について、どの期間の履歴が必要になるのかは、担当する弁護士などに確認した方がいい。
家計簿も必要だった
そして、
家計。
東京地裁では、申立て時に「家計全体の状況」を提出することが案内されている。
個人再生は、
「借金を減らしてください」
だけの手続きではない。
収入がいくらあるのか。
毎月いくら使っているのか。
再生計画を立てたあと、本当に返していけるのか。
そのために家計も確認される。
匿名男の場合
僕も申立て前に家計をまとめて提出した。
食費。
光熱費。
生活に必要なお金。
その他の支出。
ひと月だけを見るのではなく、一定期間の生活状況を見せる。
こうして書くと普通なのだけれど、
借金生活を長く続けていた僕にとって、
自分のお金の使い方を他人に全部見せる
というのは、なかなか不思議な体験だった。
「契約するときに出したから終わり」ではなかった
僕は弁護士と契約したときにも、一度かなりの資料を出していた。
だから心のどこかで、
「書類関係は一回やった」
と思っていた。
ところが申立てが近づくと、
もう一度。
最新の給与。
最新の家計。
最新の口座履歴。
追加の資料。
匿名男、最新版。
個人再生の申立てでは、その時点の収入や財産、家計を確認する必要がある。
東京地裁の提出書類にも、資料によって対象期間や有効期間が指定されている。
だから、
以前提出した書類が、そのままずっと使えるとは限らない。
ここは実際にやってみて初めて実感した。
僕が申立て前に確認されたもの
僕の場合、申立て直前のやり取りでは、かなり広い範囲を確認された。
大まかにまとめると、
- 家計の状況
- 銀行口座と取引履歴
- ほとんど使っていない口座の残高
- 給与・賞与
- 税金や所得に関する資料
- 退職金に関係する資料
- 現金
- イラスト制作による収入と経費
- 借金が増えていった経緯
- 過去の収入や返済状況
- 一部の支出についての説明
など。
裁判所の必要書類一覧を、そのままチェックして終わりではなかった。
担当弁護士から、
「この数字は何ですか」
「この口座はどういう口座ですか」
「この時期はどういう状況でしたか」
という確認も入る。
僕の場合は、申立書を作るために、
僕という人間の金融史を、かなり細かく再構築する作業
になった。
詳しいやり取りはSTORYにまとめている。
競馬を少しかじったことも説明した
実は僕、
競馬を少しかじったことがある。
友人と遊ぶ延長で、しばらく買っていた時期があった。
これは借金の主な原因ではなかったし、競馬をするために借金をしていたわけでもない。
それでも申立ての準備では、
いつ頃だったのか。
どのくらい使ったのか。
払戻しはどのくらいだったのか。
と、かなり具体的に確認された。
契約時にも競馬をしたこと自体は伝えていたのだけれど、申立て前はさらに詳細を整理することになった。
この経験から分かったのは、
「大したことじゃないから言わなくていいだろう」
と自分で判断しない方がいい、ということだった。
必要かどうかを決めるのは僕ではない。
聞かれたことには、そのまま答える。
結局、それが一番早かった。
イラスト制作の収入も確認された
僕には、本業以外にイラスト制作の収入があった。
といっても、金額としては微々たるもので、経費まで含めれば赤字だった。
それでも、
「少額だから関係ありません」では終わらない。
収入や支出の根拠として、僕の場合は数年分の確定申告書を提出した。
そのうえで、
どのくらい収入があるのか。
制作にどのくらい費用がかかっているのか。
借金との関係はあるのか。
といったことも確認された。
実際、個人再生委員との面談でも、イラスト制作の収入や経費について質問された。
僕の場合は借金の原因そのものではなかったけれど、本業以外のお金についても、申告している内容を資料で説明できるようにする必要があった。
金額が小さいから自分で省いていい、という話ではなかった。
面談で実際に何を聞かれたのかは、STORYにまとめている。
そして「1,197円」まで聞かれた
申立て直前。
担当弁護士から、銀行口座に入っていたある入金について確認された。
金額は、
1,197円。
「これは何のお金ですか?」
調べる。
勤務先から振り込まれた、
交通費の精算だった。
以上。
1,197円。
借金、約250万円。
そして確認される、
1,197円。
でも、このとき僕はむしろ、
「そこまで確認して作る書類なんだな」
と思った。
分からない入出金があれば確認する。
説明できれば、それで進む。
個人再生の書類集めは、
単に紙を集めるというより、
自分のお金について説明できる状態にする作業
でもあった。
書類は最初から少しずつ整理した方が楽
僕がもう一度やるなら、早い段階から整理しておく。
特に、
銀行口座の一覧
は作っておいた方が楽だと思う。
普段使う口座。
給与口座。
昔作った口座。
ほとんど使っていない口座。
自分が何を持っているのかを、一度洗い出しておく。
そのうえで、
- 給与明細
- 源泉徴収票など
- 賞与関係
- 家計
- 銀行の取引履歴
- 財産に関係する資料
を、担当者から指定された期間に合わせて集める。
ただし、
「ネットに必要と書いてあったから、とりあえず全部取得する」
必要はない。
裁判所や案件によって必要書類は異なる。
全国の裁判所も、必要書類は申立先へ確認するよう案内している。
出典: 裁判所「個人再生手続」
先に担当弁護士などから必要な書類と対象期間を聞いて、それに合わせて集めた方が無駄が少ない。
マイナンバーはそのまま出さないよう注意
書類を集めるときに、もう一つ注意したいのが、
マイナンバー。
東京地裁の案内では、住民票はマイナンバーが記載されていないものを提出し、マイナンバーが記載された疎明資料については、その部分をマスキングしたコピーを提出するよう案内している。
これは、
「書類が必要だから何でもそのまま出す」
ではないということ。
実際の提出方法は担当弁護士や裁判所の指示に従った方がいい。
書類が見つからないときは?
古い口座。
昔の収入。
捨ててしまった明細。
「そんな資料、もうないよ」
となることもあると思う。
その場合、
分からないまま適当に数字を書くのは避けた方がいい。
取得し直せるのか。
代わりの資料で説明できるのか。
どこまで遡る必要があるのか。
これは担当弁護士などへ相談する。
僕の場合も、追加で必要なものが出るたびに、
探す。
送る。
また聞かれる。
探す。
送る。
を繰り返した。
正直、
一発で全部そろえるゲームではなかった。
なぜこんなに細かく書類を見るの?
最初は僕も、
「そんなところまで必要?」
と思った。
でも、個人再生の仕組みを考えると理由は分かる。
返済額を考えるには財産を確認する必要がある。
再生計画を続けられるか判断するには収入や家計を見る必要がある。
債権者を正しく扱うには借金の内容を確認する必要がある。
だから、
家計を見る。
口座を見る。
収入を見る。
過去の借金を見る。
そして最後に、
この先どう暮らすのかを見る。
個人再生の必要書類が多いのは、単に裁判所が紙を集めたいからではない。
生活を立て直すための再生計画を作れる状態なのか確認するため
と考えると、僕にはかなり理解しやすかった。
必要書類は「自分のお金の棚卸し」だった
個人再生の申立て準備で、
僕は自分のお金についてかなり細かく説明した。
どこから給料が入る。
どこへ使う。
どんな口座がある。
どんな収入がある。
なぜ借金が増えた。
今はいくら持っている。
それまで、
お金が足りなくなったら借りる
ということを繰り返していた人間が、
自分のお金を全部並べて説明する。
なかなか皮肉な話だ。
でも、この作業を通して初めて、
自分の生活を数字で見ることになった。
個人再生の必要書類は多い。
かなり面倒だった。
それでも僕にとっては、
借金を整理するための書類であると同時に、自分の生活を一度全部棚卸しする作業
でもあった。
次に読むなら
実際の申立て準備では何が起きた?
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